教育格差と階級社会

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日本における晩婚化と少子化は、将来の昇給や雇用に対する不透明感や高い教育費が原因の一つになっている。

この20年の間、金融技術の変化がもたらした危機やインターネット技術の進歩によるパラダイムシフトなどにより、日本を代表する上場企業が傾いたり新興企業の栄枯盛衰が激しく繰り返されている。

現代の日本において20年後の自分の収入や経済的な安定を確約することは、誰にとってもかなり難しい。いや、10年後に自分がどのような仕事をして生計を立てているのかを想像することさえ難しい状況だ。

子を作り産むという決断は、そこから少なくとも19年、できることなら23年の間、「一定水準以上の収入を得続ける」というコミットメントを、これから生まれてくる子供にするのと同じ意味を持つ。



孫世代にまで影響する晩婚化

二週間ほど前に書いた「東京では子供2人私立なら世帯収入1,000万円でも親の援助が必要 – 格差社会ならぬ階級社会の到来?」という記事の中で、東京で子供二人を私立校に通わせようとするサラリーマン世帯は、祖父母世代の援助が無いと経済的に厳しいだろうということに触れた。

年収1000万円は高望みしすぎだとしても、700万円ぐらいの世帯収入を手に入れてから子供を作ろうとすると、主たる稼ぎ手(以下この記事では夫とします。)が20代で第一子を設けることはかなり難しい。

例えば、夫が30歳の時に子を授かったとしよう。その子が大学を卒業する23年後、夫の年齢は53歳だ。

そして、その子が同じように30歳で孫を授かったとき、祖父となった夫は60歳になっている。

孫が小学校に入学する7年後では67歳だ。年金の減額や支給年齢の引き上げなどによりキャッシュフローはかなり厳しい状況が想像できる。果たして孫の教育費をどの程度援助できるであろうか。

もっとも、若い頃から収入の高い仕事につき、そこそこの退職金をもらい、子会社や関連会社に役員として再就職できたのであれば、充分な援助が可能であるだろう。

教育格差は世代を超えて連鎖する

受けた教育や育った家庭環境と将来の収入には相関が認められるという統計がある。

経済的に恵まれた家に生まれた子は恵まれていない家庭の子に比べ、将来手にするであろう収入が高くなる。そして、その子や孫の世代へも連鎖して受け継がれていく可能性が高いということでもある。

農業や工業技術や芸術などの分野においても、属人性の高い技能や感性を子や孫の世代に伝えていくという点において、同じことが言える。

振り返れば、バブル期の一億総中流時代、その当時の親たちの多くは、彼らが受けた教育よりもワンランク上のものを子供たちに与えることができる機会を手に入れていた。

その子供である僕らの世代は、今の子供達と比べてかなり幅の広い選択肢を手に入れていた。経済成長と収入が右肩上がりする前提の社会構造では、それは何ら不思議なことではなかった。

ところが最近の20年を見ると、経済は停滞し年齢を重ねても収入はそれほど大きく伸びず、年金制度も事実上崩壊し、将来に対する不安ばかりが増加している。そして、男女同権やら女性の社会進出がどうこうと主義主張する以前の問題として、そもそも共働きをしなければ豊かな生活をできない社会構造に変化しつつある。

こういった社会構造の変化が、教育格差の世代連鎖をさらに強くする方向に働くであろうことは想像するに難くない。

能力別のクラス編成や特待生制度を積極導入した方が良いと思う

いつからか運動会の徒競走で順位をつけることが良くないことだとされたり、能力別のクラス編成が廃止されたりしている。

人には身体能力が優れていたり、芸術的な感性に富んでいたり、数学的なセンスがあったりと生得の個性というものがある。もちろん生まれてくる家庭の資産状況や環境もそれぞれ違う。

生まれた瞬間から人間は平等ではないのだ。

しかし、少なくとも生得の能力を伸ばす機会だけは平等に与えられる社会でなければいけない。特に親の経済的な状況に縛られるようなことは、なるべく無くなって欲しい。

小学校から学科ごとに能力別のクラス編成をし、能力のある子弟には費用のかかる塾などに行かずとも高いレベルの教育を受け続けられるようにするべきだ。

昨今の流れとは逆になるが、国立大学は学費の完全無償化をするか各学科ごとに優秀な能力をもつ子弟について特待生制度を設け学費免除とするなど、家庭の経済環境が悪くても高度な教育を受けられるような道筋をより拡充するべきだ。

教育という相続財産によって階級社会が生み出されるのであれば、その壁を容易に越えることのできる道筋を作ることに国の予算を振り分けるべき時なのではないかと強く思う。

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